環境研究総合推進費 播磨灘を例とした瀬戸内海の栄養塩管理のための物理-底質ー低次生態系モデルの開発

究概要Summary

【 課題番号 】
5-2005
【研究課題名】
播磨灘を例とした瀬戸内海の栄養塩管理のための物理―底質―低次生態系モデルの開発
【 研究期間 】
令和2年度(2020年度) ~ 令和4年度(2022年度)
【研究代表者】
森本昭彦(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)

研究全体の概要

瀬戸内海の水質は1960~1970年代の高度経済成長期に急激に悪化した。
その後、瀬戸内海環境保全特別措置法によりリンや窒素の総量規制が行われ、長い時間を要したが瀬戸内海の栄養塩濃度は低下し、ある意味きれいな海となった。
その一方で、イカナゴの不漁やノリの色落ちなど漁業生産量は水質の改善と反対に低下している。漁業生産を回復させるために陸からの栄養塩負荷量を増加させるべきとの議論があるが、まずは陸からの栄養塩負荷量の変化に対する海域の栄養塩濃度の応答を理解する必要がある。
瀬戸内海は四方を陸に囲まれ多くの都市に面しているため、栄養塩は主に河川を通じて陸から供給されていると考えがちである。
しかし、既往の研究によると、瀬戸内海の約60%の栄養塩は太平洋を起源とするものであり、さらに、海底の底質から溶出する栄養塩量は河川からの栄養塩の2.5倍との見積もりがある。
これらの見積もりが正しいとすると、河川から供給される栄養塩が瀬戸内海の栄養塩に占める割合は十数%にすぎない。
したがって、太平洋や底質からの栄養塩の供給量が変化すると、陸からの栄養塩供給量の変化よりも瀬戸内海の栄養塩濃度に与える影響は大きい可能性がある。

本研究では、底質からの栄養塩溶出量やプランクトンの長期的な変遷に関する情報が充実している播磨灘を対象とし、陸起源、底質起源、太平洋起源の栄養塩の割合とその時間変化を明らかにでき、陸からの栄養塩負荷量を変化させたときの栄養塩循環を定量的に計算可能な物理―底質―低次生態系モデルを構築することを目的とする。
このモデルを構築するため、サブテーマ1として香川大学は底質からの栄養塩溶出量の変動機構を解明するため、現場観測と室内実験により基礎生産・沈降粒子束・底質からの栄養塩溶出を同一の観測点において見積もる。
サブテーマ2を担当する愛媛大学はサブテーマ1により見積もられた底質からの栄養塩溶出量の変化と水中での有機物の分解過程を再現できる底質モデルと低次生態系モデルを開発する。
また、太平洋起源の栄養塩の挙動を解析可能な黒潮域を含む瀬戸内海を対象とした空間分解能1㎞の低次生態系モデルを開発し、このモデルの結果を境界条件とする播磨灘を対象とした空間分解能500mの物理―底質―低次生態系モデルを開発する。

研究全体の概要図